- 「猫が爪とぎをするせいで、ソファーや壁紙がボロボロに・・・」
- 「せっかく買った爪とぎを使ってくれない」
- 「爪とぎはしつけでやめさせることはできるの?」
猫の爪とぎや爪のケアで悩んでいる飼い主さんは、実はとても多いんです。
猫の爪とぎは本能による自然な行動。でも、壁やソファなど“してほしくない場所”でされてしまうと、困ってしまいますよね。
この記事では、猫が爪とぎをする理由や爪とぎの対策、爪切り方法、猫にあった爪のケアグッズの選び方などを獣医師の視点でやさしく解説します。
愛猫と快適に暮らすために、ぜひ参考にしてみてくださいね。
爪とぎをする4つの理由

猫の爪とぎは、本能による行動で、問題行動ではありません。

本能による行動は、しつけでやめさせることはできないよ
猫が爪とぎをするのは主に以下の4つの理由があります。
- 爪のメンテナンス
- 縄張りを示すためのマーキング
- 気分転換やストレス発散
- 飼い主へのアピール
それぞれ解説していきましょう。
爪のメンテナンス
猫の爪は玉ねぎの様に複数の層でできています。一番外側の層は地面に擦れたりして段々丸まって傷んできます。そのため、古くなった最外層を爪とぎで剥がし、鋭い新しい爪を出します。
縄張りを示すためのマーキング
猫の肉球や指の間には臭腺があり、爪とぎをすると匂いをつけることができます。
また、視覚的に爪痕を残すことで、「ここは自分の場所」という看板を出します。玄関や部屋の入口など、出入りが多い場所に爪痕を付ける傾向があるのはこのためです。
気分転換やストレス発散
猫が興奮した時やイライラした時に爪とぎをするのは、気持ちを落ち着かせようとする行動の1つです。私たちも、ストレスを感じた時に頭をかきむしったり、髪をいじってしまったりと、それぞれ癖があるのと同じです。
飼い主へのアピール
構ってほしい時に、音を立てて飼い主の気を引こうとする行動です。
家の中で猫が爪とぎしやすい場所 ベスト3


猫が好む爪とぎスポットは以下の場所です。
- 猫がよく通る場所
- 猫が寝起きする場所の近く
- 家具や角や柱など、出っ張ってて目立つ場所
①ドア付近、廊下、リビングの入り口など、猫が普段よく通る場所では、習慣的に通るついでに爪とぎをしていきます。
②猫は起きてすぐに伸びと爪とぎをする習性があります。
③ソファやタンスの角、柱などの目立つ場所はマーキングを兼ねて爪とぎをされやすいです。
爪とぎされて困る場所…どうしたらいい?


爪とぎは猫の本能による行動。しかし、「それならどうしようもない」とただ家具が傷つくのを見ているだけではなく、してほしくないところで爪とぎをさせないよう、飼い主が先回りして対応を取れるようにしましょう。
- 爪とぎを置く
- キャットタワーを置く
- 家具の保護や、素材を変えてみる
- ストレス対策
爪とぎを置く
一番手軽にできる対策は、自分の猫が好きなタイプの爪とぎを置いて、爪とぎの場所を指定してあげることです。



猫をよく観察して、好みのタイプを見極めるのが大事
猫の爪とぎには様々な製品があります。
素材
段ボール製、麻縄といったよく見かけるもの以外にも、カーペット素材、木材、ジュートなど、猫の好みに合わせて選びましょう。
爪とぎの向き
姿勢を低くして水平に爪とぎするのが好きな猫と、後ろ足で立ち上がって垂直に爪とぎするのが好きな猫がいます。縦型のものは、壁や柱に引っ掛けたり、壁に貼ったりするなど色んなタイプがあるので、選んでみてください。
家具の保護や、素材を変えてみる
布製のソファやカーペットは爪が引っかかりやすいため爪とぎスポットになりやすいです。特に手すりの部分や角は好む猫が多いです。
ソファーの素材を布製から合皮に変えてみる、ソファーの手すりに保護シートを貼るといったように、爪とぎ防止グッズを利用してみましょう。
ストレス対策
- 1匹で落ち着いて過ごせる時間や場所がない
- 同居猫との相性が悪い
- 飼い主さんや家族が猫を構いすぎる
などのストレスから爪とぎが増える猫もいます。



猫は、1匹で過ごす時間を犬よりもずっと必要としている動物
1匹で過ごす場所を作るには、キャットタワーがおすすめです。キャットタワーは、多頭飼いのおうちでは1匹に1個必要なくらい、猫の暮らしに欠かせないアイテムです。
キャットタワーがあると、 垂直方向の運動ができるだけでなく、高いところにある休憩スペースで1匹でくつろぐことができます。
柱の部分に麻縄が巻かれているものも多く、爪とぎアイテムとしても使えます。
猫の爪切りは必須ではないが、気になるなら切る


「爪とぎをされたくないなら、爪を切ったらいいのでは?」という疑問にお答えします。
猫の爪は、爪とぎによって長さがある程度一定に保たれているので、必ずしも飼い主さんが短く切ってあげる必要はありません。
ただし、下のような理由があるときは、検討してもいいでしょう。
- あまり爪とぎをしない猫で、爪が伸びていることが多い
- 抱っこする時に服に引っかかったり、腕に当たったりして痛い
- シニアになってあまり爪とぎをしなくなり、爪が伸びている
- 爪が伸びて先端が皮膚に当たってしまっている
爪が伸びすぎると、先端が丸まり、皮膚に食い込んだり刺さってしまうこともあります。こうなると猫が自力で爪を剥ぐことはできないので、獣医師に相談しましょう。
猫の爪切りの基本


初めて猫の爪切りをされる飼い主さんでも、安全に猫の爪を切る方法をお伝えします。
猫の爪切りは、最初のうちは1人は切る係、1人は保定係の2人1組で行うと安全です。猫も飼い主さんも慣れてきたら1人でできるようになります。



犬よりも猫のほうが爪切りを嫌がる子が多いよ。
用意するもの
- 爪切り
- 止血剤
- ティッシュやガーゼなど出血した時に抑えるもの
ギロチンタイプの爪切りが便利
猫の爪切りは、先端の穴に爪を通して切るギロチンタイプの爪切りが最も使い勝手がいいです。切れ味が良く、初心者にもおすすめです。ネットやホームセンターのペットコーナーでも市販されています。



人の爪切りを使うと爪が割れてしまうこともあるので、使わないでね
猫の爪切りの方法
- 猫を座らせて、保定係が猫を脇に挟むように抱える
- 保定係は、反対の手で猫の胸を抑え、前に出てこないようにする
- 猫の根元付近は血管が通っているので、先端の透けている部分の2〜3mmをカットする。
深く切りすぎて血が出てしまったらティッシュやガーゼでしばらく圧迫して止血します。止血剤を塗っておくとより丁寧です。
切った部分を触ってみて引っ掛かりがあるとソファーやカーテンに引っ掛けたりして割れてしまうこともあるので、やすりを掛けましょう。



頻度は1〜2ヶ月に1回で十分
動物病院やトリミングサロンでもできる?
動物病院やトリミング、ペットサロンでも猫の爪切りのメニューがあります。
500〜1,000円で猫の爪切りをしてくれますので、自分で切るのが心配な方は聞いてみてください。
切るのは前足だけでよい猫も
猫の足を観察すると、前足の爪は普段は指の間に隠れていて、指の付け根を押すと出てくるのに対し、後ろ足の爪は元々外に出ています。これは、前足の爪は攻撃用の爪、後ろ足の爪はスパイク用の爪だからです。
前足は猫にとって重要な攻撃の爪なので、触られるのを嫌がる猫も多いので気をつけましょう。嫌がる子は無理せず、獣医師やトリマーにお任せください。
まとめ


爪とぎは猫の本能であり、爪のメンテナンスや縄張りの主張、心を落ち着かせるためにやっている自然な行動なので、しつけでやめさせることはできません。
ですが、飼い主さんが自分の猫をよく観察し、爪とぎのグッズを用意したり、ストレス対策をしたりして、猫の爪とぎの場所と頻度をコントロールしてあげることで爪とぎの「困った」を減らすことは十分可能です。
爪とぎができない事情のある猫は、1〜2ヶ月に一度、爪を切ってあげましょう。
爪とぎの対策を工夫して、お互いに気持ちよく毎日を送りましょう。