猫もフィラリア症の予防が必要?室内猫のリスク・症状・予防薬の選び方を獣医師が解説

「フィラリアって、犬の病気じゃないの?」「うちは完全室内飼いだから関係ないよね?」

猫を飼っている方から、こういった声をよく耳にします。実は、猫もフィラリアに感染することがあります。しかも、猫のフィラリア症はまだ治療法が確立しておらず、発症してからでは治療が難しい怖い病気です。

この記事では以下について解説します。

  • 猫のフィラリア感染の仕組み
  • 室内猫でも感染リスクがある理由
  • 症状の特徴と、診断が難しい理由
  • 感染後に治療薬が使えない理由
  • 予防薬の選び方と投与のコツ

フィラリア症は、猫も犬と同じで予防薬をきちんと使えばほぼ確実に防げる病気です。今まで猫のフィラリア予防をしていなかった飼い主さんも、今後は予防を検討していただければ幸いです。

目次

猫もフィラリアに感染する?犬との違いを知っておこう

フィラリア(犬糸状虫 / Dirofilaria immitis)は、蚊が媒介する寄生虫です。感染した動物の血を蚊が吸い、その蚊が別の動物を刺すときにフィラリアの幼虫が体内に入ります。

にゃーす

感染経路は犬も猫も一緒

ただし、犬と猫では感染後の病態が大きく異なります。

 
成虫の寄生数数十匹になることも多くても数匹(多くは1〜3匹)
主な寄生場所心臓・肺動脈肺動脈(心臓には到達しにくい)
症状の特徴運動不耐性・腹水など慢性的な症状咳・嘔吐・突然死(急性の症状が出やすい)
成虫を駆除できる薬ある安全に使えるものがない

フィラリアにとっては猫よりも犬の体内ほうが成長に適した環境です。そのため、猫に感染してもフィラリアの幼虫が成虫まで育ちにくく、寄生数も少ない傾向があります。

しかし、猫は体が小さく血管も細いため、成虫がたった1〜2匹死亡するだけで肺に急性の炎症(HARD:犬糸状虫随伴呼吸器疾患)が起きることがあります。寄生数が少ないほど症状が軽いとは言い切れないのが、猫のフィラリア症の難しいところです。

にゃーす

寄生数が少ないから検査でも見つかりにくいのも厄介だよ

室内猫でも感染するのはなぜ?

「外に出さないから安心」と思いたいところですが、蚊はちょっとした隙間からも室内に入ってきます。室内だからといって、感染のリスクがないわけではありません。

にゃーす

ドアを開けた一瞬でも蚊は入ってくるよ!

猫のフィラリア症の症状は?

猫のフィラリア症でみられる症状には、以下のようなものがあります。

  • 慢性的な咳
  • 繰り返す嘔吐
  • 食欲不振・体重減少
  • 呼吸困難(口を開けた呼吸)
  • 失神・ぐったりする
  • 突然死

特に厄介なのが、これらの症状が「猫喘息」や「慢性気管支炎」と見分けがつきにくい点です。

また、症状がほとんどないまま経過し、突然死で初めてフィラリア症だとわかるケースもあります。

猫のフィラリア症の診断が難しい理由

のフィラリア検査には、
抗原検査:成虫が持つ抗原を血液キットで検出する
ミクロフィラリア検査:血液中のミクロフィラリアを顕微鏡で確認する
の2つの方法があります。

一般的なのは抗原検査で、より確実な診断のために2つを併用するケースも多いです。

しかし猫では、成虫の寄生数が少ないため、これらの検査で正確に判定できないことが多く、感染していても陰性になることがあります。

米国で行われた全国規模の血清調査※では、飼い猫の抗体陽性率は3.5%、抗原陽性率はわずか0.3%でした。

「陰性だから感染していない」とは言い切れないのが現状です。

※Leutenegger CM. et al., Parasites & Vectors. 2023;16:296. PubMed

感染しても治療薬が使えない?猫のフィラリア症が怖い理由

犬のフィラリア症には、体内の成虫を駆除する薬があります。しかし猫に対しては、安全に使用できる成虫駆除薬がありません

その理由は、フィラリア成虫の「死に方」にあります。猫の体内で成虫が死亡すると、その死骸が肺動脈に入り、HARD(犬糸状虫随伴呼吸器疾患)と呼ばれる激しい肺の炎症を引き起こします。

この反応が急激に起きると、呼吸困難や血圧低下により命に関わることがあります。

猫のフィラリア症の治療

猫のフィラリア症の治療は対症療法が中心になります。

ステロイドや気管支拡張剤で症状を和らげながら、体内のフィラリアが自然に死ぬのを待つという経過をたどります。猫の体内でのフィラリア成虫の寿命は2〜4年とされており、長期にわたる管理が必要になることもあります。

猫のフィラリア症は、感染してからでは対処の選択肢が非常に限られます。「予防が唯一の根本的な対策」であることを、ぜひ覚えておいてください。

にゃーす

治療が長期になることも。かかりつけ医と相談しながら続けてね

猫のフィラリア予防薬の種類と選び方

猫のフィラリア予防薬は、スポットタイプ(首の後ろに液剤を垂らす滴下タイプ)が主流です。犬のように飲み薬タイプは少なく、猫への負担が少ないスポット剤が広く使われています。

にゃーす

投与後すぐおもちゃで遊ぶと気がそれて舐めにくくなるよ

予防薬には大きく2種類あります。

 フィラリア予防ノミ・ダニ予防回虫など腸内寄生虫
フィラリア単体タイプ
オールインワンタイプ

フィラリア・ノミ・ダニ・腸内寄生虫をまとめて予防できるオールインワンタイプが人気です。猫はノミに悩まされることも多いため、一度に複数の予防ができるのは飼い主さんにとっても便利です。

ただし、食物アレルギーがある猫や既往症によっては使用できない成分の薬もあります。また、体重によって使用する製品が変わります。必ず動物病院で診察を受けてから処方してもらってください。

フィラリア予防薬は動物用医薬品(要指示薬)です。獣医師の診察・処方のもとで使用してください。

犬用の予防薬を猫に使ってはいけない

フィラリア予防薬なら犬用でも同じでは?」と思う方がいますが、これは絶対に避けてください。

犬用フィラリア予防薬の一部には、アベルメクチン系の成分が犬の体重に合わせた濃度で含まれています。この成分を猫に使用すると、神経毒性が現れ、ふらつき・嘔吐・けいれん・昏睡といった重篤な中毒症状を起こす危険があります。

猫には必ず猫用を使い、必ず動物病院で処方してもらうことが、こうした事故を防ぐ最善策です。

猫のフィラリア予防はいつから?投与のコツも

フィラリア予防薬を始める時期の考え方は、犬と同じです。蚊が活動し始める時期の約1ヶ月後から投与を開始し、蚊がいなくなった約1ヶ月後まで続けます

地域ごとの目安は以下の通りです。

地域開始の目安終了の目安
北海道・東北6月11月
関東・東海・北陸5月12月
近畿・中国・四国4〜5月12月
九州4月翌1月
沖縄通年通年

上の表はあくまで目安です。気候は年によって変わるため、実際の開始・終了時期はかかりつけの動物病院で確認してください。

よくある質問(FAQ)

Q. 室内猫でもフィラリア検査は必要ですか?

検出率は低いですが、念のため、これまで一度もフィラリア予防をしていない猫は、予防を始める前に動物病院で検査を受けることをおすすめします。

Q. 猫のフィラリア感染率はどのくらいですか?

少々古いデータですが、日本での研究では、埼玉県で行われた調査(Niwetpathomwat A. et al., Journal of Veterinary Medical Science, 1997)において、2歳以上の猫の成虫感染率は4.1%と報告されています。

最近の報告は見つからなかったのですが、温暖化の影響で蚊の出現期間が伸び、生息域も広がっているので、感染リスクは高まっていると考えてよいでしょう。「ゼロではない」という前提で予防に取り組むことが大切です。

まとめ

猫のフィラリア症は「犬だけの病気」ではありません。室内で猫を飼っていても蚊の侵入経路がある以上、感染するリスクがあります。

猫のフィラリア症は診断が難しく、感染後に安全に使える治療薬もありません。対症療法で長期間管理するしかないという現実があります。だからこそ、予防だけが唯一の確実な選択肢です

まだ今シーズンの予防を始めていない方は、早めにかかりつけの動物病院を受診してください。猫の状態に合った予防薬を処方してもらえます。

にゃーす

毎年の予防が、愛猫の命を守るよ!

万が一フィラリアに感染してしまった場合の治療費(対症療法など)は、ペット保険の補償対象になる場合があります。詳しくはこちらもご覧ください。

犬のフィラリア症については、こちらの記事もあわせてご覧ください。

犬のフィラリア予防薬をいつから始めればいいか迷っている方はこちらもどうぞ。

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