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【獣医師が解説】犬の無駄吠え 状況別の対処法や病気との区別のポイントも解説

「玄関チャイムがなると大騒ぎする」
「お散歩中、犬や人に吠えてしまう」
「留守番をさせるとずっと吠えているので、ご近所迷惑が心配」

などと、犬の無駄吠えに悩んでいる飼い主さんは多いです。

この記事では、無駄吠えと生理的な吠えとの違い、無駄吠えが起きやすい状況別の対処法や、認知症の夜鳴きとの違いを獣医師の視点でやさしく解説します。

飼い主さんと犬が今よりもっとよい関係を作り、ストレスのない毎日が送れるよう、一緒に対応方法を考えていきましょう。

目次

「吠え」と「無駄吠え」の境界は、必要性の有無や吠える量

では、犬の鳴き声はどこからが無駄吠えになるのでしょうか?

生理的な吠えは「理由や必要があって吠えること」
無駄吠えは「理由がない、もしくは吠える原因が解決したのに、いつまでも過剰に吠え続けること」

生理的な吠えは、

  • 危険を知らせる
  • 空腹を訴える
  • 寂しさを伝える

のように、吠える目的や理由がはっきりしています。そして犬は目的が達成されると自然と鳴き止むことが多いです。

一方、無駄吠えは吠える必要性が低いのに、ストレスや不安、習慣などから吠え続けてしまいます。

大きな鳴き声を出すことで更に興奮し、相手に噛みついたり飛びかかったりという攻撃の引き金になってしまうこともあります。

にゃーす

生理的な吠えも、原因が解決したのに続くと無駄吠えになってしまうよ

無駄吠えのしつけで目指す所は、頻度や鳴き声をコントロールできること

吠えることには理由があるので、「全く吠えさせない」ことを目指すのは難しいです。

ですが、原因に合わせた対応をすれば以下のように、日常生活に支障のない程度まで鳴き声を抑えることは可能です。

  • 日常生活で問題ないレベルまで吠える頻度を減らす
  • 吠え始めても自分ですぐに落ち着く
  • 飼い主さんの指示で落ち着く

間違った対処は、犬との信頼関係が悪化する可能性も

無駄吠えの対応は、犬の年齢や性格によって適切な方法が違います。

子供のしつけも、一度しっかり話をすれば分かる子もいれば、何回叱ってもすぐケロッとして忘れてしまう子もいるのと同じです。犬の数だけしつけの方法があると考えましょう。

その子に合わない方法を続けても、お互いにストレスになり、信頼関係が悪くなってしまいます。

「無視する」は要求吠えには正しい対応

無駄吠えに対して「無視する」といった対応は、吠えている原因によって正しい時と間違っているときがあります

飼い主を思い通りに動かしたい、かまってほしいという理由で吠えているいわゆる要求吠え」には、無視するという対応は効果的で、静かになったら褒めてあげます。

「強く叱る」のは原因が何であれ逆効果

「強く叱る」というのは、犬は恐怖や不安の感情を助長したり、興奮したりしてどんな状況でもあまりよい方法ではありません

にゃーす

叩いたり、罰をあたえるのもやめよう

【状況別】無駄吠えの原因と対策

無駄吠えが起こりやすいシチュエーションごとに、原因や対策を考えてみましょう。

玄関チャイム・来客に吠える

これらの状況に反応して犬が吠えるのは、「警戒」や「縄張り意識」によるものです。

 対策:条件付けを変える、コマンド(命令)トレーニングで落ち着かせる

いま、犬は「チャイムが鳴る→吠える」という条件付けができてしまっている状態なので、条件付けを変えてみましょう

例えば、チャイムが鳴ったら、

  • 他の部屋へ連れて行く
  • ケージの中に入る
  • おすわり、まてなどのコマンドで落ち着かせる

のように、新しい行動を教えます。この時、うまくできたらおやつなどのご褒美があるとよいですね。

にゃーす

吠えないほうがいいことがある、と学んでいくよ

散歩中に他の犬や人に吠える

この状況で吠えてしまう原因には、以下のようなものが考えられます。

  • 恐怖や警戒
  • 縄張り意識
  • 遊びたいのに自由に遊べないストレス
  • 人や犬に対する接し方がわからない社会化不足

社会化とは、子犬の頃にいろいろな人・犬・物・環境に触れさせることで自分の適応範囲を広げていくことです。社会化がうまくいくと、成犬になったときにどんな状況でも落ち着いていられるようになります。

対策:距離を取る、こちらに意識を向かせ、褒めて安心を教える

散歩中に犬や人に会ったら、まず相手から十分距離を取って、必要なら「おすわり」「ふせ」などのコマンドで飼い主に意識を向かせます。吠えることなく落ち着いた状態で相手をやり過ごせたら、褒めてあげましょう。

留守番中に吠える(分離不安)

留守番などで1匹で残された時に吠え続けたり粗相をしてしまうのは、分離不安という症状です。分離不安の原因には、以下のようなものがあります。

  • 飼い主に対する過度の依存
  • 孤独への不安、寂しさ
  • ストレス

対策:留守番トレーニングで徐々に1人で過ごせる時間を増やす

分離不安の対処法は犬に「飼い主がいなくても、1匹でも大丈夫」と理解してもらうことが大事です。

家の中でもいつもべったりせず、姿が見えない距離で過ごす時間を作ったり飼い主さんが家の外に出て1匹で過ごす時間を作り、徐々に時間を伸ばしていくようにしましょう。

にゃーす

犬と飼い主さんで信頼関係を作ろう

出かける前後に必要以上の声掛けをすると「これから自分は寂しくなるんだ」「1人で残されるのはかわいそうなんだ」と犬が覚えてしまうので避けてください。

無駄吠えのQ&A

無駄吠えの対応についての質問にお答えします。

Q、よく吠える犬種、吠えない犬種があるのはなぜ?

全体的に犬種ごとの特性はあり、元々番犬として活躍していた犬種や、愛玩犬は吠えやすい傾向にあります。ですが、同じ犬種でも1匹ずつ個性があり、元気な子とおとなしい子がいます。

Q、声帯除去手術はどう考えられている?

現在の獣医学界では、声帯除去手術は基本的に推奨されていません。それは以下のような理由によります。

  • 無駄吠えの根本的な解消になっていない
  • 動物福祉の観点から問題がある
  • 手術自体が難しい

命に問題があるといった事情で慎重に検討されることはありますが、一般の無駄吠え対策としての声帯除去手術はほとんどの病院で行われていません

Q、無駄吠え防止首輪の使用は効果がある?

無駄吠え防止首輪(吠えると電気ショック、音、スプレーなどが出て犬を制御する)も、現在の獣医学・動物行動学では基本的に推奨されていません

これも声帯除去手術が推奨されていないのと同じく、犬に強いストレスや恐怖を与えるためです。

Q、無駄吠えの悩みは誰に相談すればいいの?

しつけの悩みは、行動診療に強い獣医師や信頼できるトレーナーに相談するのがおすすめです。

行動診療とは、必要に応じて薬も用いながら、獣医学と行動学の両面から問題行動にアプローチします。行動療法科、行動治療といった診療科目がある病院や、肩書に獣医行動診療科認定医(学会認定)などの肩書きがある獣医師は、行動診療を得意としています。

トレーナーを選ぶ時は、資格や経験、方針などを事前に確認しましょう。

シニア犬の無駄吠えは認知症の可能性も

シニア犬が理由がなくても鳴き続けるときは、単なる無駄吠えではなく認知症が原因のこともあります。

年を取ると脳が変性し、正しく物事を判断したり記憶したりする能力が低下して、行動に変化が現れます。認知症は一般的に12歳頃から発症しやすくなりますが、すべての犬が発症するわけではありません。

認知症の夜鳴きの特徴

認知症の症状の1つに「夜鳴き」があります。

認知症の夜鳴きは鳴き声に感情がなく一本調子で鳴き続けるという特徴があります。

気になるときは早めに動物病院へ

夜鳴きが続くと、ご近所さんの目も気になって、飼い主さんが心身とも疲れてしまうことはよくあります。

そんな時は、動物病院に相談し、犬に睡眠薬などを処方してもらうという選択肢もあります。夜通し鳴き続けるのは、犬にとっても体力を消費することです。薬は体重や症状に応じて処方されるので、安全に使うことができます。

まとめ

犬にとって、吠えることはコミュニケーション手段です。吠える原因には、恐怖や不安、興奮があり、これらの感情をなくすのは難しいため、完全に吠えなくするのは難しいことかもしれません。

ですが、犬が「なぜ吠えているか」を分析して、声を出す必要がないくらい安心できる状態を作るのが、無駄吠えに対する今の獣医学の基本姿勢です。正しい方法で、犬に負担をかけず、焦らず少しずつ取り組めば、問題のないレベルまで無駄吠えを減らすことは十分可能です。

犬のことを考え、理解しようと務めることで、お互いの信頼関係も強くなっていきますよ。

毎日を気持ちよく、楽しく、過ごせるようになることを願っています。

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