地震、台風、豪雨など、災害が多い日本。もしも災害が発生し流通がストップして、ペットフードや薬が足らなくなってしまったら・・・そんな“もしも”のとき、大切な家族であるペットの命を守るには、人と同じように平常時からの防災対策が必要です。
この記事では、ペットの防災対策の考え方や、ペット用の備蓄など普段からしておきたいの防災対策を実践的にお伝えします。
ペットの防災対策・災害時の対応は飼い主がするのが基本

災害時、行政対応や支援物資の供給は人のものが優先です。過去の災害においても、ペットの生活に必要な物資の調達に困ったという声が上がりました。
- 人の支援物資は届いてもペットの支援物資はなかなか届かない
- ペットが救援物資のフードを食べなかった
- ペットの治療食や薬が手に入らない
特に、ペットフードや薬など、そのペットごとに必要な物資はそれぞれ違うもの。必要なものは飼い主が用意するのが基本です。

避難所に行けばペットの支援が全て受けられると考えているのは間違い
普段から飼い主が行うべき対策 5つ


災害が起こった時にペットを守るため、飼い主が行っておくべき防災対策5つを解説します。
- 飼育スペースの防災対策
- しつけと健康管理
- 鑑札やマイクロチップでの身元表示
- ペット用備蓄
- 情報収集と避難訓練
1.飼育スペースの防災対策
ペットの居住スペースにある高い家具は突っ張り棒やL字金具できちんと固定されていますか?
屋外でペットを飼っているときは、ブロック塀が倒れたりやガラスが飛び散った時に下敷きにならないような位置で飼育しましょう。
2.しつけと健康管理
ペットの種類に関係なく、最低限のしつけと健康管理をしておきましょう。
- ケージの中で過ごすことになれさせておく
- 人や他の動物を怖がりすぎないように慣らしておく
- 排泄のしつけをする
- 望まない妊娠を防ぐため、避妊・去勢手術を行う
犬
- 「待て」「おすわり」「おいで」など、基本的なコマンドを聞けるようにする
- 狂犬病ワクチンと混合ワクチンを毎年接種する
- フィラリア、ダニ、ノミの予防をしておく
- 吠え癖を治す
猫
- 室内飼育にする
- 混合ワクチンを毎年接種する
- ノミやダニの予防をする



避難所での感染症流行を防ごう
3.鑑札やマイクロチップでペットの身元表示をする
普段から鑑札、迷子札、マイクロチップをペットに装着しましょう。迷子のペットが保護された時、連絡先が登録されていればこれらを照合することでペットの飼い主に引き渡すことができます。
身元表示はマイクロチップが確実でおすすめ
マイクロチップは、ペットの首の後ろ辺りに直径2mm、長さ1cm程度のカプセルのような装置を獣医師が挿入します。
首輪や迷子札は、付けるのを忘れていたり、猫のセーフティーバックル付きの安全首輪のように強い力がかかった時に外れてしまったりと、万が一の時役立たない可能性もあります。



マイクロチップは一旦挿入すれば、外れたり落ちる心配はない
知人から譲ってもらったり、保護した動物は、動物病院で獣医師に装着してもらうとよいでしょう。
マイクロチップ装着費用は病院によって異なりますが、数千円~1万円程度です。他に、登録費用(オンラインで300円、郵送で1,000円)がかかります。
挿入は予防注射と同じくらいの短時間ですみます。
4.ペット用の備蓄を用意する
災害時、ペットの食料や生活必需品は自分で用意することが基本です。特に以下のようなケースは、災害時にフードや薬を調達するのは難しいかもしれません。必ず飼い主さんが用意しておきましょう。
- 食物アレルギーがある
- 好き嫌いが激しく決まったフードしか食べない
- 療法食を処方されている
- 常備薬が必要
1ヶ月程度の備蓄を用意しておくと安心
ペットの備蓄は、ペットの健康や命に関わるものを優先的に10日〜1ヶ月程度用意しておくと安心です。
薬の種類や用法、容量はいざというとき他の獣医師からも処方してもらえるよう、写真を取ったりメモを残したりしておきましょう。



ペットのお薬手帳を作るといいね
優先順位1 ペットの命や健康を守るための備蓄
- フード(療法食も含む):普段食べているものを10日分以上
- 水:目安は10kgの犬で500〜1000ml/日
- 持病の薬
- 投薬のための補助食品やシリンジ
- キャリーバッグやケージ
- 予備の首輪(安全バックルのない外れないタイプ)
- リード複数本(繋留用に鎖やワイヤー入りのものも用意)
- ペットシーツ
- うんち処理の袋、シャベル
- トイレ砂
- 食器
- ペット用の靴(移動時にがれきやガラスによる怪我を防ぐ)
以下はペットの情報を証明するためのものです。
- お薬手帳など健康状態のメモ(ワクチン接種歴、既往歴、投薬情報、かかりつけ医)
- 写真(ペットだけのもの、飼い主と一緒に写っているものの2パターンを用意。スマホと紙で保存)
- 迷子用チラシ



もし自宅から避難するときはこれらを優先的に持ち出す
優先順位2:ペット用品
- 口輪:避難所でいざというときのため
- ペット用靴:避難所に歩いて行くときに足を保護するため
- ブラシ
- おもちゃ
家族の備蓄としても使えるもの
- タオル
- ウエットティッシュ
- トイレットペーパー
- ビニール袋
- 新聞紙
- 洗濯ネット(猫の保定に)
- ガムテープ
- 油性マジック



共有して使えるから便利
5.情報収集と避難訓練
災害が起こり自宅での避難生活が困難になった時、自治体でペットの受入れ可能な避難所があるかを確認しましょう。また、ハザードマップを元に、ペットを連れて避難所まで安全に移動できるルートを確認しておきましょう。
災害時に自宅から移動するときは、猫や小型犬はキャリーバッグで運ぶようにし、中型以上の大きさの犬は自分で歩かせます。この時、割れたガラスや瓦礫などで足を傷つけないよう、ペット用の靴があると安心です。
同行避難の原則と現実
ペットを連れて避難することを「同行避難」といいます。避難先は避難所に限らず、親戚宅や知人宅、ホテル、高台なども含まれます。
環境省は同行避難を推奨していますが、ペットの受け入れや避難所の運営は自治体に任されています。
動物が苦手な人もいるし、鳴き声、におい、アレルギーなどが原因で他の避難者とトラブルが起こったという報告もあり、実際は動物との避難はまだ課題がたくさんあります。
安全が確保されていれば自宅避難・車内避難も選択肢にいれる
新型コロナウイルス感染症の流行以降、避難所での過密状況を防ぐため、避難所への避難が唯一の選択肢ではなく、自宅での在宅避難や親戚・知人宅、車内避難も含めて検討するという方針に変わってきています。
「ペットがいると周りに気を遣う」などの理由で、自宅や車での避難を選ぶ飼い主さんもいます。
自宅や車内は、備蓄さえしっかりあれば普段に近い生活が可能です。
プライバシーを守ることができ、周りに気を使うことがなくペットと一緒に落ち着いて過ごせる一方で、事前に自治体に申請をしておかないと情報や支援物資などが得にくい可能性があったり、エコノミークラス症候群などのリスクもあります。
今日からできる!ペット備蓄の第1歩


今日一日で防災対策を完璧にするのは難しいことかもしれません。身近なところからできる防災対策を初めてみましょう。
「いつものフード、いつものグッズ」が非常時は一番安心
備蓄用だからといって長期保存可能の食料などの特別なものを用意する必要はありません。
特にペットは食べ慣れていないものは非常時であっても警戒して食べてくれない可能性もあります。急なフードの変更はお腹の調子を崩す原因にもなります。
水は長期保管水でも問題ありません。
ローリングストックで無理なく備える
災害時の備蓄方法としてローリングストックが広く知られています。フードや薬も同様に「多めに買って、使いながら補充する」ことで、日常と非常時をつなぐ備えになります。
今日、いつもと同じフードを1袋余計に買って備蓄に回してみましょう。



薬は保管期限もあるから、獣医師に相談してみてね
家族で防災会議をしよう
9月1日「防災の日」や3月11日のように、私たちにとって忘れられない日を防災会議の日として設定し、家族間で以下のようなポイントを話し合ってみましょう。
- 備蓄の確認
- 家族間の連絡方法や集合場所
- ペットの避難方法の確認
- 緊急時のペットの一時預け先の確保
まとめ


「備えあれば憂いなし」と言いますが、それはペットも同じです。特にペットの命を守れるかどうかは普段の飼い主さんの意識や防災対策の有無に大きく左右されます。
「うちの子にとって、何が必要かな?」と考えて行動することが、防災の第一歩です。今日から少しずつ、できることから始めていきましょう。