「雨の日も台風の日も、外に連れて行かないとトイレをしてくれない……」
屋外でしかうんちやおしっこをしない犬は決して珍しくなく、動物病院にも同じ悩みを抱えた飼い主さんがよく来院されます。
飼い主さんも犬も元気なうちは「散歩のついでだから」とそれほど困らなくても、大雨や猛暑の日、飼い主さんの体調が悪い日などは大変ですよね。さらに、災害で外に出られないときや、愛犬が年をとって足腰が弱ったときには、外でしか排泄できないことが大きな負担になる可能性があります。
また、外でしか排泄ができないということには、健康上見過ごせないデメリットもあります。
これらを総合的に考えると、犬は屋内でも排泄できるようにしつけをしておきたいところです。
この記事では、犬が外でしか排泄しなくなる理由から、室内トイレへの移行方法、雨の日や災害時の対処法、シニア期に備えて今からできることまで、獣医師の視点でわかりやすく解説します。
にゃーす犬にも飼い主さんにもやさしいトイレ習慣を身に付けさせよう
外でしか排泄しない犬がいるのはなぜ?


お家の中では排泄を我慢して外で排泄したがるのには、それまでの生活で身についた習慣や、「土や草の上で排泄する」という場所・足元への好みなど、犬なりの理由があります。
- 外での排泄が習慣になっている
- トイレの設置場所が悪い
- トイレが汚れていて落ち着かない
- マーキングが習慣になっている
それぞれ解説します。
① 外での排泄が習慣になっている
犬は経験を通して「どこで排泄するか」を覚えていきます。そのため、毎日散歩中に排泄する生活を続けているうちに、「トイレは外でするもの」と学習しているケースは少なくありません。
また、犬は排泄するときの場所だけでなく、足元の感触や周囲の環境なども排泄のサインとして覚えていきます。
たとえば、毎日、
- 草の上
- 土の上
- 電柱の近く
- 散歩コースの決まった場所
などで排泄している犬は、その環境そのものを「トイレ」と認識している可能性も。



室内にペットシーツを置かれても、トイレと認識していない
特に、子犬のころから散歩中の排泄が中心だった犬では、この傾向が強くなることがあります。
② トイレの設置場所が悪い
室内にトイレを作っても、場所や環境が犬に合っていないこともあります。
- 人が頻繁に通る廊下にトイレがある
- テレビや洗濯機の近くで音がうるさい
- 子どもやほかのペットが近づいてくる
といった環境では、落ち着いて排泄できず、結果として静かな屋外を選ぶようになってしまいます。
③トイレが汚れていて落ち着かない
きれい好きで神経質な犬の場合、トイレが汚れたままだと使うのを嫌がってしまいます。他の犬の排泄のにおいが残っていたり、シーツがおしっこでふやけていたりすると、それだけで「ここではしたくない」と感じる犬もいます。
トレーのサイズが体に対して小さすぎる場合も、はみ出しや失敗が増え、犬自身がトイレを避ける原因になります。
④ マーキングが習慣になっている
オスの犬は、生後6か月ごろから縄張り意識が強まり、あちこちに少量の尿をかけるマーキングをするようになります。
マーキングは「排泄」というより「自己主張」の意味合いが強い行為です。しかし、外で何回もおしっこをしているうちに、室内ではまとまった量のおしっこができなくなることがあります。
外でしか排泄しないと困ること2つ


外でしか排泄しない犬で困ることは主に下の2つです。
- 我慢のしすぎで泌尿器トラブルを起こすことがある
- 飼い主さんの負担が大きくなる
それぞれ解説しましょう。
我慢のしすぎで泌尿器トラブルを起こすことがある
外でしか排泄できなくても、毎日十分な回数の散歩に行けているのであれば、すぐに病気になるわけではありません。しかし、散歩に行くまで何時間でも我慢することが習慣になっている犬は注意が必要です。
尿が長時間排泄されずに膀胱にとどまると、細菌が繁殖して以下のような病気の引き金になることもあります。
- 膀胱炎
- 膀胱結石
- 腎盂腎炎
実際の診療でも、外でしか排泄しない犬がこうした病気で来院することがあります。
排尿回数には個体差があるため、「1日○回なら正常」「○回以下なら病気」と回数だけで判断することはできません。
そのため「外でしか排泄しない犬は必ず膀胱炎や尿路結石になる」というわけではありませんが、排尿の機会を確保し、長時間我慢させない環境を作ることは大切です。
こんな症状には注意
次のような症状は泌尿器の病気の可能性があるので、愛犬にこのような変化がみられたら動物病院を受診しましょう。
- 何度も排尿姿勢をとるのに尿が少ししか出ない
- 排尿時に痛がる
- 尿に血が混じる
- 急に排尿回数が増えた
- 尿がまったく出ない
とくに排尿姿勢をとっているのに尿がほとんど出ない場合は、尿道閉塞など緊急性の高い病気が隠れている可能性があります。
飼い主さんの負担が大きい
外での排泄が習慣になっている犬は、雨・台風・猛暑・厳寒でも毎回頑なにその習慣を守る子が多いです。体調の悪いときや真夜中でも外に連れて行くのは、飼い主さんにとって大きな負担になる可能性があります。
特に犬が高齢になると、夜間のトイレ回数が増え、この負担は一気に大きくなります。



犬の高齢化に伴い、介護疲れも問題になってきている
介護のことを考えると、体が元気なうちに室内トイレを覚えさせておくことは、飼い主さんの負担を減らすことにもつながります。
便のトラブルは実際は少ない
「うんちを我慢すると便秘や巨大結腸症になるのでは?」と心配される方もいます。ですが、そこまでの便のトラブルに至るケースは、現場ではほとんど見かけません。
外から室内トイレへ移行させる方法をステップ解説


ここからは、外での排泄から室内トイレへ移行させる具体的な方法を紹介します。
室内トイレ移行の6ステップ
- 広く落ち着けるトイレを用意する
- 水分を制限しない
- 排泄しやすい時間を狙う
- 排泄の合図を覚えさせる
- 成功したらすぐに褒める
- 失敗した場所はしっかり掃除する
外での排泄が習慣になっている犬に、「今日から家のトイレでしてね」と言っても、すぐには理解できません。
いきなり外での排泄を禁止するのではなく、排泄場所の選択肢を1つ増やすところから始めましょう。
1.落ち着いて排泄できるトイレ環境を作る
まずは室内トイレの場所を見直しましょう。
おすすめなのは、
- 人の出入りが少ない
- 大きな音がしない
- 食事や寝床から少し離れている
- 犬が自由に出入りできる
場所です。
囲いがあるとトイレを認識しやすい
トイレは犬の体より十分に広いものを用意します。外で広い場所を使っている犬ほど、小さなトイレトレーを窮屈に感じることがあります。
トイレのトレイだけ置いてあっても最初はトイレと認識しなかったり、周りの目が気になって排泄ができないこともあります。その場合、トレイ周りに囲いを作ってあげるのもおすすめ。囲いのあるトイレは飼い主さんの片付けの負担も楽になります。


こちらのトイレは、中にトイレ用トレイを置くだけでなく、中の床や壁にシートを取り付けて使うこともできます。汚れてしまったらシャワーで洗い流せます。サイズはM(小〜中型犬用)、Lサイズ(中〜大型犬用)の2種類があります。
ペットシーツの選び方
ペットシーツは、体のサイズの2倍が目安と言われています。
ですが、トイレトレーニングの段階では、ワイドサイズのシーツを複数枚敷いたり、サークル内の広い範囲をトイレスペースにしたりして、「成功しやすい環境」を作るのがおすすめです。
ペットシーツは安価なものを選ぶとおしっこが吸収しきれず漏れてしまったり、排泄前に犬がクルクルと上を歩き回っているうちによれて敗れてしまったりすることもあります。機能面も考慮して選ぶのがおすすめです。
2.水分を制限しない
「家の中でおしっこをすると困るから」と、飲み水を減らすのはやめましょう。犬がいつでも新鮮な水を飲めるようにしておくことは、健康を守るうえでも大切です。
室内トイレの練習では、排泄したくなるタイミングを逃さないことがポイントになります。ただし、無理に大量の水を飲ませて排尿させる必要はありません。
3.排泄しやすいタイミングでトイレへ誘導する
犬が排泄しやすいのは、
- 朝起きたあと
- 食事のあと
- 水を飲んだあと
- 遊んだあと
- 昼寝から起きたあと
などです。
愛犬が普段何時ごろ排泄しているかを数日記録してみると、タイミングをつかみやすくなります。排泄しそうな時間になったら、散歩へ出る前に一度室内トイレへ誘導してみましょう。
トイレに閉じ込められると、犬が「トイレのスペース=嫌な場所」として覚えてしまいます。排泄しなければ一度切り上げて、次の機会に再チャレンジします。
5.排泄の合図を覚えさせる
外で排泄するときに、
- 「ワンツー」
- 「トイレ」
- 「シーシー」
など、毎回同じ言葉を静かにかけてみましょう。
排泄が終わったらすぐに褒めます。これを繰り返すと、犬が言葉と排泄を関連づけ、合図によって排泄しやすくなることがあります。
6.室内で成功したらしっかり褒める
室内トイレで排泄できたら、その場ですぐに褒めましょう。おやつが好きな犬なら、小さなおやつをごほうびにしても構いません。
7.失敗した場所はしっかり掃除する
トイレ以外の場所で排泄してしまった場合は、静かに片づけます。
尿のにおいが残っていると、その場所を再びトイレだと認識する可能性があるため、ペット用の消臭・洗浄剤などを使ってきれいにしましょう。
失敗を減らすためにも、「褒める」だけでなく「間違った場所に排泄の目印を残さない」ことが大切です。



失敗しても叱らず、成功をほめてね
老後・シニア期を見据えた室内トイレの備え


室内トイレを覚えてほしい理由として、愛犬が年をとったときの飼い主さんにかかる負担もあげられます。
シニア犬になると、
- 足腰が弱る
- 関節に痛みが出る
- 尿量や排尿回数が変化する病気にかかる
- 夜間にも排泄したがる
- 認知機能が低下する
- 今までできていたトイレを失敗する
といった変化がみられることがあります。
夜中に何度も排泄したくなるようになれば、そのたびに飼い主さんが外へ連れ出すのも大きな負担です。若いころなら玄関の段差を越えて散歩へ行けた犬でも、足腰が弱れば外へ連れ出すこと自体が大変になります。
だからこそ、元気に歩けるうちに室内でも排泄できるようにしておくことをおすすめします。
完全に室内にしようと焦らなくても大丈夫
「普段は散歩中にするけれど、必要なら家でもできる」というだけでも、犬との生活やシニア期の負担は大きく変わります。
寝たきりになった場合には、ペットシーツを広く敷いたり、犬用おむつやマナーベルトを利用したりするという方法もあります。
シニア期のケア全般については、老犬・老猫のシニアケアの記事で詳しく解説しています。介護や通院費への備えとして、ペット保険を早めに検討しておくのもひとつの方法です。
まとめ:犬の健康と老後を見越し、室内トイレの習慣も身に付けていこう


外でしか排泄しない犬への向き合い方を解説してきました。最後に大切なポイントをおさらいします。
- 外でしか排泄しない子には本能や習慣の理由がある。家でしないことを叱らない
- おしっこの我慢のしすぎは膀胱炎・膀胱結石・腎盂腎炎のリスクに。飼い主さんの負担も考えると室内でもできると安心
- 焦らず、成功を褒めて少しずつ室内トイレへ移行する
外排泄から室内トイレへの移行は、一日で叶うものではありません。それでも、愛犬の健康のためにも、飼い主さんののためにも取り組む価値があります。今日から少しずつ、できることから始めてみてくださいね。






