寒くなってきたら気をつけたい猫の病気の1つが、尿道閉塞です。
- 何度もトイレに入るのに、砂が固まっていない
- 排尿のときに鳴く
- 陰部をずっと舐めている
- 冬になってから水をあまり飲まなくなった
こうした変化は、尿道閉塞という病気のサインかもしれません。
尿道閉塞は、おしっこの通り道が結晶などが固まった栓や、結石で詰まって排尿できなくなる状態で、猫の病気のなかでもとくに緊急性が高いものです。
先に結論をお伝えします。
尿道閉塞は冬に増える病気です。その理由の1つは、寒さで猫の飲水量が減ること。飼い主さんは、猫の健康を守るためにも、冬はより一層飲水量に気をつけてあげる必要があります。
この記事では、
- 冬に「おしっこが出ない」が増える理由
- 様子を見てはいけない症状と受診の目安
- 放置するとどのくらいで命に関わるのか
- 動物病院での治療と再発を防ぐ食事
- 冬の尿トラブルを防ぐために今日からできること
を獣医師の視点で解説します。寒さが本格化する前に、愛猫の水まわりとトイレを見直しておきましょう。
冬に猫の「おしっこが出ない」が増える理由

冬になると猫の泌尿器トラブルが増えます。それは、寒さが飲水量と排尿行動に影響するためです。
具体的には次のような理由が考えられます。
- 寒さで水を飲む量が減る
- トイレが寒いと、排尿を我慢する
それぞれ解説します。
寒さで水を飲む量が減る
気温が下がるとそれほど喉が渇かなくなることに加え、温かい寝床から水飲み場まで移動するのが面倒になり、飲水量が減ってしまう猫は多いです。
にゃーす人間も同じだよね
猫は元々、犬に比べると飲水量は少なめです。
しかし、飲水量が減ると尿の量はさらに減り、尿が濃縮されます。尿が濃くなると尿中のミネラルが結晶として固まりやすくなり、その結晶が膀胱や尿道を刺激して炎症を起こしたり、塊になって尿道で詰まったりします。
猫の泌尿器の病気は、膀胱炎や尿石症、尿道閉塞などをまとめて下部尿路疾患(FLUTD)と呼ばれます。
トイレが寒いと排尿を我慢してしまう
見落とされやすいのが、トイレの置き場所です。
猫のトイレを廊下や洗面所、使っていない部屋など、暖房が届かない目の届きにくい場所に置いているご家庭はわりと多いのではないでしょうか。
排尿を我慢すると、膀胱に尿がたまっている時間が長くなります。すると、尿中に結晶ができたり、膀胱の粘膜が傷ついて剥がれたりして結石ができやすくなります。
室温そのものの目安や暖房グッズの選び方は、猫の寒さ対策の記事でくわしく解説しています。
即対応が必要な症状と、受診の目安


今すぐ受診すべきサインは次のとおりです
- おしっこがまったく出ていない
- 排尿のときに鳴く
- 陰部をなめる・気にしている
- 苦しそうにいきんで排尿している
- 尿に血が混じる
一番多い症状は「トイレに何度も行くのに、尿が出ていない」
尿道閉塞でもっとも多いのが、この症状です。猫は尿意があるため何度もトイレに入りますが、尿道が結石で詰まっているので出ません。
飼い主さんからはトイレに行っているからちゃんと出ているように見えてしまい、発見が遅れやすいポイントです。
トイレの砂が固まっているかを確認する
猫が何度も入っているのに固まった塊ができていない、あるいは極端に小さい塊しかない場合は、異常があると考えてください。システムトイレの場合は、シートが濡れているかを確認します。
トイレの外で排尿しようとする、お風呂や布団の上で排尿姿勢をとるといった、普段と違う排尿の行動も、以上があることのサインです。
排尿時に鳴く・陰部を舐め続ける・尿に血が混じる
排尿のときに鳴いたり、いきんで苦しそうな声を出したりするのは、痛みのサインです。陰部をしきりに舐めるのも、違和感や痛みがあるときに見られます。
尿に血が混じると、ピンク色や赤褐色になることもあります。
完全に詰まる前の段階では、普通に過ごしているように見えることがあります。その状態から数時間で完全な閉塞に進むこともあるため、「元気だから明日でいい」とは判断しないでください。



元気でも痛みの症状があるなら受診してね
吐く・ぐったりする・体を触ると痛がるのは一刻の猶予もない
こうした排尿の異常にくわえ、
- 吐く
- ぐったりして動かない
- お腹を触ると強く痛がる
という症状が出ているときはさらに注意が必要です。
排尿できないと、本来なら尿として捨てるべき老廃物やカリウムが体内にたまります。老廃物がたまった状態を尿毒症といい、カリウムが上がりすぎると心臓の動きにも影響します。



この段階になると、命に関わります。
夜間や休診日であっても、夜間救急の動物病院を探して受診してください。かかりつけの病院が閉まっている時間帯に備えて、通える範囲の夜間救急病院の連絡先を普段から調べて置きましょう。
オス猫は尿道の構造的に特に注意が必要
尿道の詰まりやすさはオスとメスで大きく違います。
特に注意が必要なのはオス猫。オス猫の尿道は細くて長く、途中でカーブしているため、小さな結晶や炎症で生じた細胞のかたまりでも詰まってしまいます。
メスでも泌尿器の炎症には注意
一方、メス猫の尿道は太くて短いため詰まることは比較的まれですが、泌尿器系トラブルを気にしなくてよいというわけではありません。
メス猫でも膀胱炎や尿石症は起こりますし、頻尿や血尿といった症状は同じように出ます。



メスでも飲水量、排尿量は注意してみてあげましょう
多頭飼いで「誰が出していないか」わからないときの確認方法
複数の猫で同じトイレを使っている場合、砂の塊を見ても誰のものか判断できません。
次の方法で切り分けられます。
- トイレの数を増やし、しばらく観察して誰が何回入るか見る
- 排尿姿勢をとっている猫を見かけたら、そのあと砂が固まったか確認する
- どうしてもわからないときは、心配な猫だけケージや別室で短時間過ごしてもらい、専用のトイレで確認する
おしっこが出ないまま放置すると、どのくらいで命に関わるのか


「何時間まで様子を見ていいのか」は、多くの飼い主さんが知りたいところだと思います。おおよその流れは次のとおりです。
| 排尿できなくなってからの時間 | 体の状態の目安 |
|---|---|
| 〜24時間 | 膀胱に尿がたまって大きく張る。痛みが強くなる |
| 24〜48時間 | 老廃物やカリウムが体にたまり始め、吐く・ぐったりするなどの症状が出る |
| 48時間以降 | 尿毒症や高カリウム血症が進み、命を落とす危険が高くなる |
これはあくまで目安であり、猫の体格や持病の有無、詰まり方の程度によって進み方は変わります。もっと早く悪化することもあります。
時間が経つほど治療が難しくなり、腎臓にダメージが残ることもあります。



迷ったときは動物病院に電話で相談してみて
症状を伝えれば、すぐ来るべきか、診療時間まで待てるかを判断してもらえます。
動物病院での検査・治療


尿道閉塞が疑われる場合、まず動物病院で行うのは膀胱の状態の確認と、詰まりの解除です。
尿道が詰まっている場合は、尿道にカテーテルという細い管を入れて結石を動かして詰まりを取り除き、膀胱にたまった尿を出します。
そのあと、脱水や電解質の乱れを整えるための点滴を行い、状態によっては入院して経過を見ます。カテーテルでも詰まりが解除できない場合や、繰り返し詰まる場合には、尿道を広げる手術が選択されることもあります。
治療費は入院の有無で大きく変わる
費用は、処置だけで帰れるのか、入院が必要なのか、手術まで行うのかで大きく変わります。
検査と閉塞の解除だけで済めば比較的抑えられますが、数日の入院が必要になれば負担は大きくなります。病院や地域、猫の状態によって金額は変わるため、具体的な費用は受診した病院で確認してください。
急な出費に備える方法としては、ペット保険という選択肢があります。保険の選び方や補償内容の考え方は、こちらのペット保険の記事でくわしく解説しています。
発症・再発を防ぐ食事管理


尿道閉塞は、やっかいなことに再発しやすいという特徴があります。尿中に結晶ができやすい体質や、飲水量が少ない生活習慣が変わらなければ、また同じことが起こる可能性が高まります。
泌尿器ケアのための療法食もおすすめ
尿中の結晶や結石のできやすさは、猫の食事内容に大きく影響を受けます。



そのため、フード選びはとても重要です
泌尿器の健康に配慮したフードには、尿のpHやミネラルバランスを調整するもの、水分摂取を促すものなどがあります。
フードは必ず獣医師の診断のもとで選ぶ
ただし、泌尿器ケアをうたっているフードならどれでもいいかというと、そうではありません。どのフードが合うかは結晶の種類や猫の状態によって変わります。
尿中に出きる結晶にはいくつかのタイプがあり、タイプによって適した食事はちがいます。自己判断で療法食を選ぶと、逆に尿の状態が悪くなって結石ができやすくなってしまうこともあります。
療法食は必ず動物病院で検査を受け、獣医師の指示のもとで選んでください。診断がついていない段階では、まず受診が優先です。



療法食は自己判断で選ばないでね
冬の尿トラブルを防ぐために今日からできること


尿道閉塞は、冬の過ごし方を少し変えるだけでリスクを下げられます。
- 1日の必要な水分量を知る
- 水飲み場を増やし、水を冷たくしない
- 器や給水器を猫の好みに合わせる
- ウェットフードで水分ごと摂らせる
- トイレは暖かい場所に、数を増やす
1日の必要量は体重1kgあたり50mlが目安
まず、猫の水分摂取量の目安を知っておきましょう。猫が1日に必要とする水分量は、体重1kgあたり50mlが目安です。
- 3kgの猫:約150ml
- 4kgの猫:約200ml
- 5kgの猫:約250ml
この量は、器から飲む水だけでなくフードに含まれる水分も合わせた量です。
ドライフードは水分が1割程度しかないため、ドライフード中心の食生活では、必要な水分のほとんどを水から飲む必要があります。
逆にウェットフードは7〜8割が水分なので、食事から水分をかなり補えます。
水飲み場を増やし、ぬるま湯にする
もっとも手軽で効果が出やすいのが、水飲み場を増やすことです。
猫が過ごす部屋ごとに1か所を目安に置いてみてください。寝床のそば、よく通る廊下、ふだん遊ぶ部屋などです。寒い廊下や窓際は避け、暖かい場所を選びます。
冬は、水の温度も大切です。冷たい水を嫌う猫は多いので、人肌程度のぬるま湯にすると飲む量が増えることがあります。
器や給水器を猫の好みに合わせる
猫は水を飲む環境にこだわりがあります。器が合っていないだけで飲まなくなることもあります。
見直すポイントは次のとおりです。
- 深さ:ヒゲが当たらない浅めで広い器を好む猫が多い
- 素材:陶器やステンレスを好む猫、プラスチックのにおいを嫌う猫がいる
- 高さ:少し高さがあると首を曲げずに飲めて、シニア猫は楽
- 場所:フードやトイレのすぐ隣は避ける
流れる水を好む猫には、循環式の給水器が向いています。水が動いていることで興味を持ち、飲む量が増える猫もいます。
ただし、循環式給水器はこまめな掃除とフィルター交換といった管理を必ずやってください。手入れが追いつかないと水が汚れて、かえって飲まなくなります。モーター音を嫌がる猫もいるので、置いてみて飲まなければ普通の器に戻して構いません。
ウェットフードやスープで水分ごと摂らせる
どうしても水を飲んでくれない猫には、食事から水分を摂る方法が有効です。
- ウェットフードを1日の食事の一部に取り入れる
- ドライフードにぬるま湯を加えてふやかす
- スープタイプのおやつを与える
スープタイプのおやつは、水分補給のきっかけとして使いやすい一方で、カロリーや塩分が加わる点に注意してください。おやつ全体で1日の摂取カロリーの1〜2割以内におさめるのが目安です。
持病があって食事制限を受けている猫では、与えてよいか獣医師に確認してください。
トイレは暖かい場所に、数を増やす
飲水量と同じくらい大切なのが、排尿を我慢させない環境作りです。
猫はトイレの環境にとても敏感です。中には、トイレが排泄物で汚れていたり、他の猫の排泄物があったりすると排泄を我慢してしまう子もいます。
さらに理想をいうと、頭数+1か所予備のトイレがあるとさらに安心。トイレが汚れているとき我慢することなく予備トイレを使うことができます。飼い主さんの掃除の負担は増えますが、検討してみてください。
トイレは、猫が過ごす暖かい部屋のなかに置くのが基本です。寒い廊下や洗面所にしか置いていない場合は、冬のあいだだけでも暖かい部屋に増設してあげてください。
猫砂の種類やトイレの形で使ってくれないこともあります。トイレ環境の整え方は猫のトイレの記事も参考にしてください。
飲水量は「測って記録する」とわかる
工夫をしても、実際に飲む量が増えたかどうかは見た目ではわかりません。測ってみるのがいちばん確実です。
やり方はシンプルです。
- 計量カップで量った水を器に入れ、量をメモする
- 24時間後に残った水を計量カップに戻して量る
- 入れた量から残った量を引く
複数の器を使っている場合は、全部を合計します。蒸発する分があるので正確な値ではありませんが、同じ器・同じ環境で比べれば増えたか減ったかはわかります。
記録しておくと、受診したときに獣医師へ伝えられる貴重な情報になります。
なお、冬なのに急に水を飲む量が増えた場合も注意が必要です。飲水量と尿量が明らかに増えているときは、腎臓の病気や糖尿病などが隠れていることがあります。猫に多い腎臓の病気については、猫の慢性腎臓病(CKD)の記事で解説しています。
よくある質問(FAQ)


猫の冬の尿トラブルについて、よく寄せられる質問をまとめました。
まとめ:寒くても水分をしっかり取らせて尿道閉塞を防ごう


猫が冬におしっこをしないときの危険性と、予防のためにできることを解説してきました。最後にポイントをおさらいします。
- 冬は飲水量が減って尿が濃くなるため、尿道閉塞が起こりやすい季節
- まったく出ていない・排尿時に鳴く・吐くときは、様子を見ずにすぐ受診
- 予防の軸は、食事・飲水管理とトイレの環境づくり
尿道閉塞は怖い病気ですが、早く気づけば命を守れますし、冬の環境を整えておけば発症のリスクも下げられます。
寒さが本格化する前に、水飲み場とトイレの場所を見直してみてください。器を1つ増やす、トイレを暖かい部屋に移すといった小さな工夫が、愛猫の冬の安心につながります。






