ペットとの生活は、私たちにかけがえのない喜びや癒しを与えてくれます。だからこそ、ペットショップの前を通りかかったときに、衝動的に「この子、かわいい!飼いたいな」と思ったことがある方は多いはずです。
でも、ペットを飼うという決断には、「かわいい」という気持ちと同じくらい大切なことがあります。
飼ってみて初めて「思った以上にお金がかかるな」と驚いた飼い主さんも多いことでしょう。
この記事では、アニコム損害保険が毎年発行している「家庭どうぶつ白書」の2025年のデータをもとに、ペット飼育にかかるお金のリアルを、獣医師の目線で解説します。
- お金のことで苦しむ飼い主さん
- 費用のせいで治療を諦めるしかないペット
こんな状況を少しでも減らしたい。そんな思いでこの記事を書きました。
これからペットをお迎えしたい方も、すでに飼っている方も、ぜひ参考にしてみてください。
にゃーす筆者はFP3級も持っています
アニコム「家庭どうぶつ白書2025」とは


この記事で紹介するデータは、アニコム損害保険が2010年から毎年発行している「家庭どうぶつ白書」(2025年版)をもとにしています。
家庭動物白書は、ペット保険「どうぶつ健保」の保険金支払い実績と、契約者へのアンケート調査結果をまとめた、大規模なペット疫学データ集です。「どうぶつ健保」の保有契約件数は133万件(2025年9月末時点)にのぼり、大規模なデータにもとづいた信頼性の高い内容です。
詳細な資料は以下から確認できます。
調査概要と有効回答数
この記事で紹介する年間費用のデータは、アニコム損保のペット保険契約者を対象に、2024年1月1日〜12月31日の1年間にペット1頭へ支出した費用についてインターネットで実施したアンケート調査にもとづいています。
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 有効回答数 | 1,481件 | 1,966件 |
| 回答時点の平均年齢 | 5.8歳 | 5.6歳 |
平均寿命や年齢別の医療費データは、2008年〜2024年にアニコム損保の契約を開始した犬・猫を対象に作成された生命表・診療費統計にもとづいています。
犬・猫と一緒に暮らす「期間」と「年間費用」の目安


まず、ペットとの暮らしが「どれくらいの期間・金額になるのか」を大きく把握しておきましょう。



「毎月なんとなくかかってるな」ではなく、数字に置き換えてみよう
犬・猫の平均寿命は約15年
今や、犬や猫も長寿化が進んでおり、平均寿命は約15歳。
ペットの長寿化には以下のような理由があります。
- 飼育環境の変化
- ペットフードの質の改善
- 獣医療の進歩



飼い主にはそれだけの期間支え切るという覚悟が求められます
年間費用の目安
同白書によると、2024年の年間費用(1年間に実際にかかった支出の合計)は以下の通りです。
| 犬 | 猫 | |
|---|---|---|
| 年間費用 | 41.4万円 | 17.8万円 |
「年間費用」は、フード代・医療費・ペット保険料・トリミング代・日用品代・光熱費(飼育に伴う追加分)などを含む、飼い主が実際に1年間で支出した金額の合計です。
この年間費用は、調査の平均年齢での回答です
注意が必要なのは、この調査の回答者のペットは平均5〜6歳で、まだ医療費が上がりきる前の年代です。



シニア期に入ると医療費だけで2〜3倍に跳ね上がる傾向があります
また、生涯を通じた総額は、この年間費用に単純に年数をかけた金額よりも高くなる可能性が高いと考えておいてください。
犬・猫の初期費用はいくら?お迎え時の相場


ペットお迎えする時にかかる「初期費用」についても把握しておきましょう。アニコム「家庭どうぶつ白書」では、ペットの生体価格(ペットそのものの価格)の調査は行われていません。
人気の品種や希少な毛色の子は高額になりやすい傾向です。そのため、全国的な犬の平均、猫の平均などの統計を算出することは難しいです。



生体価格は数万円〜数十万円と幅があります。
猫は譲渡がまだ多い
夫の動物病院でペットの入手方法を聞くと、猫では野良猫を拾ったり、知人からの譲渡されたりと、無償で迎えられている子がまだ多い印象です。



受診する猫も、血統種よりも日本猫系の雑種が多いよ
一方、犬では無償で迎える人は少なく、ペットショップやブリーダーから購入するケースが大半です。
飼育グッズや登録料、マイクロチップ代もかかる
お迎えのときには、ケージや食器などの飼育用品や、市町村への登録料、マイクロチップの装着費用もかかります。



登録料とマイクロチップは生涯で1回
令和4年6月1日から、ブリーダーやペットショップ等で販売される犬や猫は、マイクロチップの装着が義務化されています。そのため、多くのケースでは生体価格にマイクロチップ代が含まれています。
初期ワクチン費用について
一般に、0歳(初年度)の子犬・子猫は、複数回のワクチン接種が必要です。一般的には3回です。
ワクチンは種類が豊富で、飼育状況やお住いの地域によっても選ばれるワクチンが変わるため、その子によって費用に差が出ます。
犬・猫の月々の費用はいくら?ランニングコストの平均


初期費用と並んで重要なのが、毎月継続してかかる「ランニングコスト」です。
犬・猫の月間支出の内訳
同白書の年間支出調査をもとに、犬・猫それぞれの月あたりの支出額を算出してみました。以下の通りです。
| 費目 | 犬(月平均) | 猫(月平均) |
|---|---|---|
| フード・おやつ | 6,896円 | 5,107円 |
| ケガや病気の治療費 | 6,698円 | 2,705円 |
| ペット保険料 | 3,863円 | 2,483円 |
| トリミング・シャンプー・カット代 | 4,363円 | 286円 |
| ワクチン・健康診断等の予防費 | 2,940円 | 1,165円 |
| サプリメント | 1,273円 | 413円 |
| 日用品・洋服など | 2,290円 | 970円 |
| その他(しつけ・ホテル・交通費・光熱費追加分など) | 6,191円 | 1,740円 |
| 支出総額(月平均) | 約34,513円 | 約14,868円 |
実際の支出は次のような要因で大きく変わります。
体格
フード代や薬用量は体重によって算出されます。小型犬よりも大型犬の方がかさみやすいです。
犬種
トリミングが必須な犬種(プードル・シュナウザーなど)は月数千円単位のカット代がかかります。一方、抜け毛のセルフケアだけで済む犬種・猫はこの費目がほぼ発生しません
年齢
医療費は特にシニア期で大きく変動します(次章で詳しく解説します)。
ランニングコストを「固定費」として考える
「月数万円くらいならなんとかなる」と思う方もいるかもしれません。でも大切なのは、この支出がペットが生きている約15年前後続くという視点です。
お迎えする前に「家計の固定費として余裕を持って払い続けられるか」を一度確認してみてください。



犬は月3.5万円、猫は月1.5万円前後が15年続くイメージを持って
犬・猫の医療費


ランニングコストの中で特に「予測しにくい」のが医療費です。一般的にシニア期に入るとかかりやすい病気が増えたり、健康診断のための通院が増え、医療費も大きく跳ね上がる傾向にあります。
実際に、年齢帯別の年間診療費データを見ると、その差がはっきり表れます。
| 年齢帯 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 0〜4歳 | 52,613円 | 39,102円 |
| 5〜9歳 | 88,362円 | 55,845円 |
| 10歳以上 | 172,742円 | 106,158円 |
突発的な病気や事故も起こる可能性がある
若いうちは年1回程度のワクチン接種や健康診断で済んでいる家庭も多いでしょう。ところが、若くて色んなものに興味を持ち元気なペットは、飛び降りてケガをしたり、誤食をしたりという突発的な事故も起きることがあります。
院長の猫も、クッションの隅っこをかじって飲み込み、緊急手術でお腹を切って取り出しました。



急に発生する出費があるということも覚えていてね
高齢になると増える病気
ペットの長寿化が進んだ現代では、病気や介護は「もしかしたら起きるかもしれないこと」ではなく、「いつか必ず直面する可能性が高いこと」として備えておくことが重要です。
シニア期によく見られる医療費の目安
- 腫瘍の摘出手術+入院:20〜30万円前後
- 心疾患の継続投薬:月1〜2万円前後
- 慢性腎臓病の点滴・定期検査:月1万円前後
いずれも一般的な目安です。病気のステージや各病院の治療方針によって大きく異なります。
医療費に備える2つの方法
医療費への現実的な備え方は、大きく2つあります。
- ペット保険に加入する
- ペット専用の貯金を積み立てる
① ペット保険に加入する
ペット保険は、若いうちに加入しておくことで、月々の保険料を抑えながら高額医療に対応できます。
同白書によると、実際にペット保険に加入している飼い主が支払っている保険料は、以下の通りです。
| 項目 | 犬 | 猫 |
|---|---|---|
| 年間平均 | 46,354円 | 29,791円 |
| 月平均 | 3,863円 | 2,483円 |



加入は「元気なうちに」「早めに」が基本
ペット保険の選び方・注意点については、こちらの記事で詳しく解説しています。
② ペット専用の貯金を積み立てる
月々のランニングコストとは別に、医療費専用の口座に若いうちから少しずつ積み立てる方法です。月々の保険料を払いたくない方や、保険の適用外になりやすい慢性疾患が心配な方にも向いています。
まとめ


ペット飼育にかかるお金のリアルな数字を、統計データと獣医師、FPの視点でまとめました。
- 犬・猫と暮らす期間は今や平均15歳前後。年間費用は犬約41.4万円・猫約17.8万円が目安(あくまで現在の平均年齢5〜6歳時点の値)
- お迎え時の初期費用は、生体価格(数万円〜数十万円、猫は無償で迎えるケースも多い)に加えて、ワクチン・飼育用品代・登録料なども別途見込んでおく
- 月の支出総額は犬で約34,500円・猫で約14,900円。15年前後続く「固定費」として計画を
- シニア期の医療費は0〜4歳の2.7〜3.3倍に跳ね上がる。年を追うごとに総額は大きくなる前提で、ペット保険か専用貯金のどちらかで必ず備えを
「ペットが愛おしい」という気持ちはもちろん大切です。それに加えて、「この子の一生を費用面でも最後まで支え切れる」と確認した上でお迎えすること、そして飼い始めた後も家計を定期的に見直すこと。
ペットをお迎えするには、こうした視点も忘れずにいてくださいね。



数字を正しく知ることが、家族とペットを幸せにする第一歩








